この記事の監修・編集について

本記事は、株式会社GKMが運営する「法人資金支援センター」編集部が作成・編集しています。当編集部は、登録いただいているファクタリング会社各社への取材・ヒアリングをもとに、実務に即した情報をまとめています。掲載内容は一般的な情報提供であり、特定の業者をおすすめするものではありません(私たちの約束)。法律の解釈は専門家によって見解が分かれることや、時代とともに変わることもありますので、実際のご契約にあたっては契約書の内容をご確認のうえ、必要に応じて弁護士等の専門家にご相談ください。専門用語はファクタリング用語辞典でも確認できます。

編集・情報提供:法人資金支援センター編集部(登録ファクタリング会社各社への取材に基づく)

なぜ人材派遣業は資金繰りが苦しくなりやすいのか

人材派遣業には、事業が健全でも資金繰りが厳しくなりやすい、はっきりとした構造があります。主な理由は次の3つです。

  • 給与は先払い、派遣料金は後払い。スタッフへの給与は毎月決まった日に支払う必要があります。一方、派遣先への請求は月末締めで、入金は翌月末や翌々月――30〜60日先になることが一般的です。つまり、お金が出ていくのが先で、入ってくるのが後。この時間差が常につきまといます。
  • 社会保険料などの会社負担も先に出る。給与だけでなく、社会保険料の会社負担分や交通費なども先に発生します。スタッフが多いほど、毎月先に立て替える金額は大きくなります。
  • 伸びるほど資金が必要になる。受注が増え、派遣する人数が増えるほど、立て替える給与の総額も増えます。これがいわゆる「増加運転資金」。成長しているのに資金が足りなくなる、という現象が起きやすいのです。

これは経営の良し悪しではなく、人材派遣というビジネスの仕組みそのものによる「お金が回るタイミングのずれ」です。利益はちゃんと出ているのに、給与の支払日だけ現金が足りない――そんな「黒字なのに苦しい」状況が生まれやすいのが人材派遣業です。

ファクタリングは、給与支払いまでのずれを埋める

このずれを埋める手段のひとつが、派遣料金(売掛金)のファクタリングです。派遣先に発行した請求書を、入金期日より早く資金化する仕組みで、借入ではなく、これから入るお金を前倒しで受け取るものです。負債を増やさずに、給与・社会保険料の支払いに必要な資金を確保できます。

人材派遣業での主な使いどころは、こんな場面です。

  • スタッフへの給与支払日に、派遣先からの入金が間に合わないとき。
  • 大型案件を受注し、先に多数のスタッフを稼働させる必要があるとき。
  • 増員・事業拡大で、立て替える給与が一時的に膨らむとき(増加運転資金)。
  • 繁忙期に向けて、まとまった運転資金を用意しておきたいとき。

派遣先が大手企業など信用力の高い取引先であれば、売掛先の信用力が評価され、条件がよくなりやすいのも人材派遣業の特徴です。手数料の考え方は手数料の相場と抑え方のコラムもあわせてご覧ください。

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派遣業ならではの論点:許可の「資産要件」とファクタリング

ここは、ほかのファクタリング解説ではあまり触れられない、人材派遣業に固有の重要な論点です。資金調達の方法によって、派遣事業の許可を維持しやすくなるか・しにくくなるかが変わってきます。

労働者派遣事業を行うには、厚生労働大臣の許可が必要で、この許可には一定の財産を備えていることを求める「財産的基礎要件(資産要件)」が定められています。1事業所の場合、原則として次の3つをすべて満たす必要があります。

要件基準(1事業所あたり)
基準資産額(資産総額−繰延資産・営業権−負債総額)2,000万円以上
基準資産額が、負債総額の1/7以上負債総額 ÷ 7 以上
自己名義の現金・預金1,500万円以上

常時雇用する派遣労働者が少ない小規模事業主には、当分の間の特例があります(10人以下で基準資産1,000万円・現預金800万円、5人以下で500万円・400万円)。また許可は新規で3年、以降は5年ごとの更新制で、更新のたびに同じ資産要件を満たす必要があります

銀行融資とファクタリングでは、要件への影響が逆になる

ここが実務上のポイントです。同じ「資金調達」でも、方法によって上の要件への効き方が変わります。

銀行融資ファクタリング
負債総額増える増えない(売掛債権の売却のため)
要件②(負債の1/7)への影響負債が増え、達成が苦しくなる方向影響しない
現預金(要件③)増える(プラス)増える(プラス)

たとえば負債総額が1億4,000万円ある場合、要件②を満たすには基準資産額が2,000万円必要になります(1億4,000万円 ÷ 7)。融資で運転資金を確保すると負債がさらに増え、更新時にこの要件が重くのしかかることがあります。その点、ファクタリングは売掛債権を売却して現金化する取引のため負債が増えず、要件②に影響を与えずに手元の現預金(要件③)を厚くできます。これが、派遣業がファクタリングを選ぶ実務的な理由のひとつです。

ただし、手数料の分だけ基準資産額は目減りする(正直な注意)

一方で、ファクタリングには手数料がかかります。額面100万円の売掛債権を手数料10%で売却すれば、手元に入るのは90万円で、差額の10万円は費用として資産から出ていきます。つまり基準資産額(要件①)そのものは、その分だけ減少します。「負債を増やさない」というメリットと、「手数料分だけ資産が目減りする」というコストは表裏一体です。決算期をまたぐ資金調達では、更新申請への影響も含め、顧問の税理士や社会保険労務士に相談したうえで判断することをおすすめします。

「給与ファクタリング」とはまったくの別物です

人材派遣業の方が必ず知っておきたいのが、「給与ファクタリング」との違いです。名前が似ているため混同されがちですが、両者はまったく別のものです。

派遣料金のファクタリング(合法)給与ファクタリング(違法)
利用するのは人材派遣会社などの事業者個人(働く人)
資金化する対象派遣先への派遣料金(売掛金)個人がもらう予定の給与
法的な位置づけ事業者向けの売掛債権の売買実質的な貸付。貸金業登録がなければ違法
金融庁の見解一般的な資金調達手段ヤミ金融として注意喚起の対象

人材派遣会社が使うのは、あくまで派遣先に対する派遣料金(売掛金)のファクタリングであり、合法的な資金調達です。一方の「給与ファクタリング」は、個人の給与を買い取るとうたいながら、実態は高金利の貸付で、金融庁が違法と注意喚起しています。名前は似ていても、対象も仕組みもまったく違う、ということを押さえておきましょう。違法業者の見分け方は専用コラムでも解説しています。

人材派遣業でファクタリングを使うメリット

派遣業がファクタリングを利用する利点を、あらためて整理します。

  • 支払いと入金のタイムラグを短縮できる。「給与が先、入金が後」というズレを、派遣料金の入金を待たずに解消できます。給与や社会保険料の支払いに間に合わせられます。
  • 審査で重視されるのは「派遣先」の信用力。見られるのは申込む派遣会社自身の業績より、売掛先である派遣先企業の信用力です。自社が赤字でも、創業まもなく融資実績が乏しくても、派遣先が信用力の高い企業であれば利用できる可能性があります。上場企業や官公庁、大手企業への派遣が中心の会社ほど、条件がよくなりやすい傾向があります。
  • 派遣先が倒産しても影響を受けにくい。ファクタリングは原則「償還請求権なし(ノンリコース)」で行われます。売却後に派遣先が倒産して派遣料金が回収できなくなっても、その損失を派遣会社が肩代わりする必要がありません。貸し倒れリスクをファクタリング会社に移せる点は、融資にはない利点です。
  • 負債を増やさずに資金調達できる。借入ではないため負債が増えず、貸借対照表を重くしません。前章のとおり、派遣業の許可要件(負債の1/7ルール)の観点でも有利に働きます。

ファクタリングのデメリット・注意点

利点だけでなく、事前に知っておくべき注意点も整理します。ここを正直にお伝えするのが、信頼できる会社の役割だと考えています。

  • 手数料の分だけ、手取りは減る。融資より調達コストが高くなる傾向があります。常用すると利益を圧迫するため、あくまで「入金までのつなぎ」として必要なときに使うのが基本です。
  • 2社間は手数料が高め、3社間は派遣先に知られる。派遣先に知られずに使える2社間は手数料が高め、承諾を得る3社間は手数料が低い代わりに派遣先へ通知が入ります(詳しくは次章)。
  • 調達できるのは売掛債権の額面まで。それ以上の資金が必要な場合は、他の調達手段と組み合わせる必要があります。

割引手形とファクタリングの違い

派遣業でも、取引によっては手形を受け取ることがあります。手形を早期に現金化する「手形割引」と、売掛債権を売却するファクタリングは、似ているようで仕組みが大きく異なります。

手形割引ファクタリング
対象受け取った約束手形売掛債権(請求書ベース)
分類借入(負債になる)債権の売却(負債にならない)
不渡り・倒産時自社が買い戻す義務あり原則、買い戻し不要(ノンリコース)
審査自社の信用も見られる主に売掛先の信用力
派遣業の許可要件負債が増える方向負債が増えない

派遣業の許可要件(負債の1/7ルール)を意識するなら、負債を増やさないファクタリングのほうが相性がよい場面が多くなります。ただし手形取引が中心の場合は手形割引のほうが低コストなこともあるため、状況によって使い分けます。

2社間と3社間、人材派遣ではどちらを選ぶ?

ファクタリングには、派遣先(売掛先)に通知しない2社間と、通知する3社間があります。人材派遣業は継続取引の派遣先が多いため、取引関係への配慮からどちらを選ぶかが悩ましいところです。

2社間3社間
派遣先への通知しないする
手数料の傾向高めになりやすい低めになりやすい
入金スピード速いことが多いやや時間がかかる
向いている場面派遣先に知られたくない/急ぎ手数料を抑えたい/派遣先の理解がある

派遣先との関係を重視して2社間を選ぶ会社は多いです。一方、派遣先が大手で信用力が高く、理解も得られるなら、手数料の低い3社間も有力な選択肢になります。どちらが正解ということはなく、自社の取引関係と優先順位で選ぶのが現実的です。詳しくは2社間と3社間の違いのコラムをご覧ください。

人材派遣業がファクタリングで気をつけたいこと

毎月の給与支払いという「待ったなし」の支出があるからこそ、業者選びは慎重に。次の点は必ず確認してください。

  • 手数料の根拠が説明されるか。なぜその手数料になるのかを、納得できる形で示せる会社を選びましょう。
  • 契約書が交付されるか。契約書を渡さない、控えをくれない業者は避けるべきです。
  • 買い戻し(償還請求権)を求められていないか。「派遣先が払わなければ買い戻す」という条件は、実質的に貸付に近く、金融庁も注意を促しています。
  • 違法な給与ファクタリングと混同しない。個人向けの給与買い取りをうたう業者は使わないこと。事業者として使うのは派遣料金(売掛金)のファクタリングです。

こんなケースで活用されています

登録ファクタリング会社への取材で聞いた、人材派遣業でよくある利用場面を紹介します。

従業員20名規模で、給与支払日に入金が間に合わなかったケース

従業員20名ほどの派遣会社で、派遣先からの入金が給与支払日に間に合わない見込みになった場面です。派遣先へ請求済みの売掛債権を資金化し、取材で聞いた例では申込から入金まで5時間ほどで約500万円を調達、給与支払いに間に合わせられたとのことです。スタッフ数が多いほど給与総額は大きく、支払日は動かせないため、こうした「あと少し足りない」を埋める使い方が最も多いと聞きます。

月商5,000万円規模で、まとまった給与資金が必要になったケース

月商5,000万円規模の派遣会社で、給与の支払いにまとまった資金が必要になった場面です。取材で聞いた例では、申込から5時間ほどで約1,000万円を資金化できたとのことでした。売掛先が信用力の高い派遣先であるほど確認がスムーズに進みやすく、金額が大きくても短時間で対応できるケースがあると聞きます。

支払いが重なっても「人件費」を最優先にしたいケース

取材のなかで各社が口をそろえて言うのが、支払いがいくつか重なったときもまず人件費(給与)を最優先にしているということです。仕入れや外注費、税金などは交渉や分割で時間を稼げても、スタッフの給与日だけは動かせない――だからこそ、給与支払いに間に合わせるための一時的なつなぎとして、派遣料金(売掛金)のファクタリングが選ばれています。

有料職業紹介(成功報酬型)の場合

同じ人材業でも、人材派遣有料職業紹介では、入金のかたちが違います。派遣は毎月の派遣料を継続して請求するのに対し、職業紹介は採用が決まったときの成功報酬が中心で、入金は毎月きまって続くとは限りません。そのため「毎月続く入金実績」を裏づけにしにくく、はじめは評価が難しいと見られることもあります。

ただ、毎月連続でなくても、資金化につながる場合はあります。過去にさかのぼった取引の履歴、決算・税金・社会保険料の状況、借入返済の実績、経営者の経歴——こうした「積み重ねた事実」が、継続入金に代わる裏づけになるためです。実際にそうした要素で資金化に至った例は、編集部ノート(毎月続く入金でなくても資金化につながった話)で紹介しています。可否や条件は取引の内容・各社の判断によって異なります。

1社で決めず、複数社を比べる

人材派遣業の売掛金は、派遣先の規模・信用力・取引の継続性などによって、各社の評価が分かれます。ある会社では条件が渋い案件が、別の会社では好条件で通ることも珍しくありません。毎月発生する売掛金だからこそ、わずかな手数料の差が年間では大きな違いになります。

1社ずつ電話して条件を聞いて回るのは、手間も時間もかかります。日々の人材手配や労務管理に追われるなかで、その遠回りは大きな負担です。一括査定なら、一度の入力で複数社の条件を比べられます。なお、一括査定だから審査が甘くなるわけではありません。審査は各社が通常どおり行います。変わるのは「相談先を探す手間」です。

よくある質問

Q. 「人材派遣 前払い」で探しているのですが、ファクタリングと同じですか?

A. 「前払い」という言葉は、個人向けの給与前払いサービスを指すことがあり、法人向けのファクタリングとは異なります。派遣会社が事業資金として派遣料金(売掛金)を早期に現金化するのがファクタリングです。名前が似ていて混同しやすい部分なので、目的に合った手段かをご確認ください。個人の給与を買い取るとうたう「給与ファクタリング」は違法な貸付にあたる点にも注意が必要です。

Q. 人材派遣会社でもファクタリングは使えますか?

A. はい。人材派遣業は、スタッフへの給与や社会保険料を先に支払う一方、派遣先からの入金は後になるため、資金繰りのずれが大きく、ファクタリングと相性のよい業種です。派遣先に発行した請求書(派遣料金の売掛金)を早期に資金化するのが基本的な使い方です。

Q. 「給与ファクタリング」とは違うのですか?

A. まったくの別物です。個人の給与を買い取るとうたう「給与ファクタリング」は、貸金業登録のない実質的な貸付で、金融庁が違法・ヤミ金融として注意喚起しています。人材派遣会社が使うのは、派遣先に対する派遣料金(売掛金)を資金化する通常の事業者向けファクタリングで、合法的な資金調達手段です。両者は対象も仕組みも異なります。

Q. 派遣先(クライアント)に知られずに使えますか?

A. 派遣先に通知しない2社間方式を選べば、原則として派遣先に知られずに利用できます。一方、派遣先に通知する3社間方式は手数料が低くなる傾向があります。派遣先が大手で信用力が高い場合、条件がよくなりやすいのも人材派遣業の特徴です。

Q. 人材派遣でファクタリングを使うとき気をつけることは?

A. 手数料の根拠が明確か、契約書が交付されるか、買い戻し(償還請求権)を求められていないかを確認しましょう。また、個人向けの違法な給与ファクタリングと混同しないことも大切です。複数社の条件を比べ、説明の誠実な会社を選ぶことをおすすめします。

Q. 派遣料金のファクタリングは即日で資金化できますか?

A. 派遣先への請求書や契約書、入金実績のわかる通帳などがすぐ出せる状態であれば、最短即日での資金化に対応できる会社もあります。特に派遣先が大手で信用力が高い場合、確認が早く進みやすい傾向があります。ただしすべての申込が当日に間に合うわけではなく、確認に時間がかかる場合もあります。給与支払日から逆算し、できるだけ早めに相談するのが安全です(最短即日で資金化できる?)。

Q. 社会保険料や外注費の支払いにも人材派遣のファクタリングは使えますか?

A. ファクタリングで得た資金の使いみちに制限はなく、給与だけでなく社会保険料や外注費、事務所家賃などの支払いにも充てられます。人材派遣業は給与に加えて社会保険料の事業主負担も先に発生するため、派遣料金(売掛金)の早期資金化でこのずれを埋める使い方は理にかなっています。ただし資金化を繰り返すと手数料の負担が積み上がるため、一時的なつなぎと位置づけることが大切です(使い続けから抜け出すには)。

Q. 有料職業紹介(成功報酬型)でもファクタリングは使えますか?

A. 使える場合があります。職業紹介は毎月続く入金になりにくく、継続の入金実績は裏づけにしにくいものの、過去の取引履歴、決算・税金・社会保険料の状況、借入返済の実績、経営者の経歴といった「積み重ねた事実」が評価につながることがあります。最終的な可否は取引の内容と各社の審査によります。

Q. 取引先からの入金が毎月続かない取引でも資金化できますか?

A. 毎月連続の入金でなくても、過去にさかのぼった取引の履歴や、決算・納税・借入返済の健全さなどの裏づけがあれば、資金化につながる場合があります。可否や条件は売掛の内容や各社の判断によって異なります。

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